価格だけじゃない!「雇用の数」と「質」でみんなの「働きがい」を応援する新しい公共調達のカタチ

「いのち会議」が提唱する、みんなが輝く社会の実現へ

「いのち会議」は、2025年10月11日に大阪・関西万博会場内で「いのち宣言」と「アクションプラン集」を発表しました。この取り組みは、すべてのいのちが輝く世界を目指すもので、今回ご紹介するのは、いのちを「つなぐ」【宣言4-5】「企業と社会が対話を深め想いと信頼にもとづいた共助の経済システムをつくろう」というアクションプランの一つです。

大阪府が実践する「行政の福祉化」とは?

今から25年前、知的障がい者をとりまく状況は大きく変化しました。1998年には法定雇用率の算定基準に「知的障害」が加わり、1999年には「精神薄弱」という言葉が「知的障害」に改められるなど、社会的な認識が進んだ時期です。しかし、自治体は知的障がい者の就労支援の推進に頭を悩ませていました。

そんな中、大阪府で生まれたのが「行政の福祉化」というユニークなアイデアです。これは、新たな予算を投入するのではなく、既存の施策や府が持つ資源を上手に活用し、障がい者の雇用や就労機会の創出、自立支援を目指すものです。

特に注目されたのは、公共調達における清掃業務でした。この業務に「知的障がい者等の就労訓練」という付加価値をつけ、価格だけでなく「障がい者の雇用」を評価する「総合評価一般競争入札」が導入されたのです。これにより、多くの雇用が生まれ、現在では大阪府の大規模物件の清掃入札に参加するビルメンテナンス企業では、障がい者雇用率が10%以上となり、産業全体がソーシャルファーム(障がい者など多様な人が働く事業体)のようになっています。

エル・チャレンジ みらい宣言

雇用の「質」を支える中間支援組織「エル・チャレンジ」

清掃現場での「知的障がい者等の就労訓練」を受託しているのが、大阪知的障害者雇用促進建物サービス事業協同組合(エル・チャレンジ)です。同組合は2019年に大阪府の「障がい者等の職場等環境整備組織」の第1号として認定されました。その役割は、大阪府から清掃業務を受託する企業と雇用される障がい者の間に立ち、誰もが働きやすい職場をつくることです。

「障がい者雇用率ビジネス」(雇用率達成のみを目的とした形式的な雇用)とは一線を画し、エル・チャレンジは、障がい者が戦力として活躍できるよう、企業と共に働きやすい職場づくりをサポートしてきました。法定雇用率を守るだけでなく、それをきっかけに業務を見直し、本人の能力開発を後押しすることで、本当の意味での戦力化と働きやすい職場づくりを進めています。

2050年に向けた社会の課題と「大阪の福祉化」の展望

2050年には日本の人口は約9,500万人と推計され、高齢層の増加と生産年齢層の減少により、社会保障費の増加と税収の減少という大きな課題が予想されています。このような状況で、従来の社会福祉制度を維持することは容易ではありません。

しかし、大阪府の総合評価一般競争入札は、2017年の「社会的コスト推計」調査でその政策的有効性が実証されています。この調査では、総合評価入札にかかる経費と障がい者就労による社会保障給付費の削減などの利益を比較し、コスト面からも効果が確認されました。

この結果は、大阪府のハートフル条例(2018)改正の追い風となり、他にも富士市のユニバーサル就労条例(2017)や東京都のソーシャルファーム条例(2020)など、就労支援に関する条例が全国で策定されています。

「いのち会議」は、行政・産業・福祉の三者が協力して生まれた「行政の福祉化」の25年間の経験を、2050年に向けて他の地方自治体や一般事業者にも広げ、「大阪の福祉化」へとつなげていくことを目指しています。エル・チャレンジなど関係各所と連携し、政策目的を持った公共調達の仕組みづくりを推進することで、誰もが「働きはじめる」「働きつづける」ことができる社会の実現に貢献していきます。

参考情報

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