Scope 2改定案の主要な論点
今回のパブリック・コンサルテーションで特に注目されたのは、電力の時間的・地理的な実態と、Scope 2の算定結果をどうやってより正確に結びつけるか、という点です。
電力の排出量算定には「マーケット基準」と「ロケーション基準」の2つの方法がありますが、マーケット基準では特に以下の3つの新しい考え方が議論の中心でした。
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アワリーマッチング: 発電と電力消費の「時間的な一致」を、もっと細かく見ていこうという考え方です。
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送電可能性(Deliverability): 「これだけ再生可能エネルギーを調達しました!」と主張する環境価値が、本当にその企業に供給されうる電力に基づいているのかを確認する考え方です。
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標準供給サービス(SSS:Standard Supply Service): 特定の企業だけでなく、複数の需要家で分け合われる電力の環境価値をどう扱うか、という考え方です。

三菱総合研究所の具体的な提案
三菱総合研究所は、排出実態を適切に反映しつつ、国際的な整合性を保ちながらも、各国の制度や市場環境、そして企業の実務に配慮したルール作りが大事だと考えて、意見を出しました。
アワリーマッチングについて
将来的にScope 2算定の精度を上げるために、アワリーマッチングはとても良い考え方だと評価しています。でも、いきなり全ての企業に適用するのは、負担が大きすぎたり、かえって算定結果が合わなくなったりする心配もあるみたいです。だから、段階的に導入したり、移行期間を設けたり、データ基盤をしっかり整えたりといった、現実的な対応が必要だと提案しています。
送電可能性(Deliverability)について
Scope 2の信頼性を高める上で、送電可能性の考え方はとても重要だと評価されています。しかし、日本の電力市場や系統運用の実態を無視して形式的にルールを適用すると、再生可能エネルギーの広範囲での調達や、将来の投資の妨げになる可能性も指摘されています。そのため、日本の実情に合った解釈や運用が、再生可能エネルギーの導入を後押しする形で進められることが重要だと考えているようです。
今後の展望
三菱総合研究所は、これからも国際的な議論の動きをしっかり見守りながら、日本の制度や市場環境を踏まえて、企業の事業活動への影響を整理していくとのことです。
これまで培ってきた算定ルールの検討・整理に関する知見を最大限に活かして、調査やアドバイス、情報発信を通じて、脱炭素経営や関連ビジネス、再生可能エネルギー政策がさらに良いものになるようにサポートしていく予定です。
用語解説
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Scope 2: 企業が購入した電力、熱、蒸気などの使用によって間接的に排出される温室効果ガスのことです。
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AMI(Actions and Market Instruments): 企業の物理的なGHG排出量には直接関係しないけれど、排出削減や除去への投資、証書・クレジットなどの市場的な手段による取り組みを補完的に把握・報告するための、GHGプロトコルが検討している新しい枠組みです。
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パブリック・コンサルテーション: ルールを改定する際に、世界中の関係者から意見を募集するプロセスのことです。
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マーケット基準: 企業が「どんな電力を調達したか」に基づいて排出量を算定する方法で、企業の調達行動が排出量に反映されるのが特徴です。
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ロケーション基準: 「どこで電力を消費したか」に基づいて排出量を算定する方法で、個別の電力調達方法に関わらず、地域全体の電力供給構成が反映されるのが特徴です。
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三菱総合研究所が提出した意見の全文は、以下のPDFファイルで確認できます。



