乳がんを「知る」ことが未来を変える!市民公開講座で正しい理解と治療の第一歩を

井本滋先生が語る「乳がんを知る」

杏林大学医学部付属病院乳腺外科教授の井本滋先生は、乳がんの基礎知識から最新治療、検診の重要性について詳しく解説しました。

男性講師が医療プレゼンテーションを行っている

乳がんの多くは乳管から発生する腫瘍で、「非浸潤がん」の段階で見つかれば治癒が期待できるとのこと。しかし、がんが乳管の外に広がる「浸潤がん」になると、血管やリンパ管を通じて広がる可能性があり、早期発見がとても大切だそうです。特に日本人女性の場合、40代に罹患のピークがあるため、40歳以上の方は定期的なマンモグラフィ検診が推奨されています。

検診だけでなく、「ブレスト・アウェアネス」という考え方も重要だと先生は強調しました。これは、普段から自分の乳房の状態を知り、左右差や形の変化、しこり、乳頭分泌などの異変に気づくことの必要性を示すものです。

治療については、「まず手術」とは限らず、がんの進行度やタイプによって手術、薬物療法、放射線療法を組み合わせることが説明されました。近年は分子標的薬や抗体薬物複合体など治療法も進歩し、進行乳がんであっても長期にわたり病状を抑えながら治療を続けられるケースが増えているそうです。副作用への理解と対処、そして患者さん自身の価値観を踏まえた治療選択も大切だと語られました。

今後の乳がん診療では、AI診断やリキッドバイオプシー、遺伝子情報を活用した個別化医療が進んでいくと予想されます。患者さん向けの乳がん診療ガイドラインを活用し、正しい知識を得ることも大切ですね。2年ごとのマンモグラフィ検診に加え、機会があれば超音波検査も受け、自分の正常な乳房の状態を知っておくことが、早期発見と適切な治療につながるとのことです。

LiLuさんが歌声に込める希望とメッセージ

続いて、乳がんサバイバーでシンガーとして活動するLiLuさんによるミニコンサートが行われました。

ホールで女性が乳がんに関する講演を行っている

LiLuさんは、「アンパンマンのマーチ」のバラード版と、ご自身が作詞作曲したオリジナル曲「ソラの約束」を披露。自身の経験と重なる歌詞に支えられたことから、定期検診の大切さを訴えながら歌を届けていると語り、会場に優しくも力強いメッセージを響かせました。定期検診を先延ばしにする理由はたくさんあるけれど、一番怖いのは発見が遅れること。「ご自身のため、大切な人のため、どうぞ定期検診を受けてください」と力強く呼びかけました。

パネルディスカッション:多角的な視点から乳がんを考える

休憩後には、井本滋先生、患者支援活動に取り組む桜井なおみさん、LiLuさんによるパネルディスカッションが実施されました。

乳がんに関する講演会またはセミナーの様子

テーマ1:治療法

乳がん治療では、がんの性質や進行度によって手術を先行する場合と薬物療法を先行する場合があることが改めて説明されました。LiLuさんは、ご自身がステージ2A・ルミナルBと診断され、全摘手術と抗がん剤治療を受けた経験を共有。桜井さんも、希少なタイプの乳がんを経験した立場から、手術・抗がん剤・ホルモン療法を受けた経験を語りました。副作用については、LiLuさんが支持療法の薬で吐き気をかなり抑えられた一方、我慢せず医師に相談することの重要性が述べられました。桜井さんは、抗がん剤治療後よりも、長期に続くホルモン療法の方が「じわじわと効いてくるようなしんどさがあった」と語り、長期治療特有の負担についても言及しました。

テーマ2:妊孕性

妊孕性については、井本先生が、乳がん患者さんの中には妊娠・出産を考える年代の人も多く、診断時に子どもを望むかどうかを確認することの重要性を説明しました。治療前に卵子や受精卵、卵巣組織の保存を検討するケースもあるものの、実際の選択は患者さんごとの価値観や状況に大きく左右されるとのこと。LiLuさんは、当初抗がん剤治療が妊娠に影響する可能性を知らず、治療前に初めて説明を受けたと振り返り、さまざまな事情を踏まえて妊孕性温存を選ばなかったご自身の判断について語りました。桜井さんもまた、治療前にパートナーと話し合い、自分たちで納得して決めた経験を語り、「周囲に合わせるのではなく、自分で決めることが大切」との考えを示しました。

テーマ3:医師とのコミュニケーション

医師との向き合い方についても、多くの示唆が共有されました。LiLuさんは、最初の医療機関では質問しづらさを感じていた一方、転院先では医師が十分に説明した後に「聞きたいことはありませんか」と声をかけてくれたことで、安心して疑問を相談できるようになったと振り返りました。患者さん向け乳がん診療ガイドラインを参考にしながら、聞きたいことを整理して受診していたそうです。桜井さんは、受診前に疑問や不安を整理し、「心」「体」「社会」の3つに分けて考える方法を実践していたことを明かしました。診察では「今日は3つ質問があります」と最初に伝えることで、限られた時間でも必要な情報を得やすくなるという工夫を共有しました。井本先生からは、医師と患者さんの相性も含めたコミュニケーションの重要性について説明がありました。セカンドオピニオンについても、目的を明確にした上で活用することが望ましいとされ、大規模病院では一人の医師だけでなく院内で複数の専門家が治療方針を検討していることも紹介されました。

登壇者紹介

井本 滋 先生

白衣を着用し眼鏡をかけたシニアの男性医師

杏林大学医学部付属病院 乳腺外科 教授。日本乳癌学会理事長などを歴任し、がん集学的治療研究財団の理事も務めています。

桜井 なおみ 氏

丸眼鏡をかけた短髪の女性

一般社団法人CSRプロジェクト 代表理事。がん経験をきっかけに患者・家族の支援活動を開始し、技術士、社会福祉士など多岐にわたる資格を持つ専門家です。

LiLu 氏

赤いドレスとアクセサリーを身につけ、マイクを持って笑顔でポーズをとる女性

シンガー・ライバー・ピンクリボンアドバイザー。乳がん経験を経て歌手活動を本格化し、ライブ配信やメディアを通じて定期検診の大切さを広めています。

セミナーのアーカイブ動画も公開中!

今回の市民公開講座の講演、ミニコンサート、パネルディスカッションの模様は、YouTubeでアーカイブ動画として公開されています。当日参加できなかった方も、ぜひこの機会にご視聴くださいね。

公益財団法人がん集学的治療研究財団について

公益財団法人がん集学的治療研究財団は、2つ以上の治療法を組み合わせる集学的治療の重要性に早くから着目し、50を超える臨床試験を実施して新たな知見を発信してきました。若手研究者への資金助成や医療機器開発のバックアップ、講演や啓発イベントなどを通じて、医療界全体への貢献を使命として活動しています。

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