経済的負担がサステナブルな行動を阻む大きな壁に
世界的に「気候疲労」で気候変動への関心が薄れつつあると言われる中、日本では「最も深刻な地球規模の問題」として「気候変動(58%)」が「戦争・紛争(57%)」を抑えてトップに。多くの日本人が気候変動を自分ごととして捉えていることがわかります。
しかし、この高い危機感が行動につながりにくいのが日本の特徴です。環境への懸念はあるものの行動に移せていない「懸念・停滞層」は35%を占め、世界平均の26%を大きく上回りました。
このギャップを生む最大の要因は、経済的な圧力です。個人的に「非常に大きい」影響を受けている問題として、「生活費の高騰(40%)」が「気候変動(32%)」を上回り第1位となりました。さらに、「サステナブルな暮らしを阻む要因」としても「高額すぎる(59%)」が圧倒的多数を占めています。

リサイクルや省エネといった「節約」につながる行動には積極的ですが、割高なサステナブル製品の購入や増税の受け入れといった「経済的負担」を伴う行動には、強い拒否感があるようです。
Z世代のサステナビリティ意識は「ミニマリスト」志向
「Z世代は環境意識が高い」というイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、日本の調査結果は少し異なる実態を示しています。サステナビリティに意欲的な「積極層」の割合は、ベビーブーマー世代以上では15%であるのに対し、Z世代ではわずか2%にとどまりました。
一方で、Z世代で最も多かったのは「ミニマリスト」で36%を占めています。これはベビーブーマー世代(39%)に近い水準です。日本の若年層のサステナブルな行動は、環境への配慮よりも、経済合理性や「持たない暮らし」への志向が動機付けになっている可能性が高いと言えるでしょう。

Z世代の32%は「懸念・停滞層」、30%は環境問題に興味を持たない「無関心層」に分類されました。この結果は、若年層に対して「環境正義」や「社会貢献」を訴えるだけでは響きにくいことを示唆しており、企業はターゲット層の現実的な関心事に寄り添う必要があります。
企業は「地球を救う」から「自分を救う」メッセージへ
では、停滞する日本人の行動変容をどう促せばよいのでしょうか。レポートでは、サステナビリティを「社会貢献」ではなく、「個人の実利」として再定義することの重要性を説いています。
特に注目すべきは「健康」という切り口です。日本人の52%が「健康的な製品」を購入しているのに対し、「サステナブルな製品」の購入率は31%にとどまります。しかし、「サステナブルな生活が自分の健康に良い」と実感できることが、行動変容を引き出すきっかけになっていることが判明しました。
また、企業のサステナビリティに関するコミュニケーションへの信頼度は年々低下しており、美辞麗句や情緒的なストーリーテリングだけでは、生活者の心には届きにくくなっています。
企業は「地球を救う」というメッセージから、「家計を救う」「自分を救う」というナラティブへ移行すべきだと提言されています。具体的には、
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「懸念・停滞層(35%)」に向けて:環境価値を「健康価値(ウェルビーイング)」に統合して伝える。自分の健康のために選んだ商品が、結果として環境にも良いという文脈を作る。
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「ミニマリスト(32%)」に向けて:環境配慮行動が、長期的なコスト削減や家計の防衛につながることを、データと根拠を持って明示する。
日本人は決して環境問題に関心がないわけではありません。経済的な不安と、何をすればよいか分からない戸惑いの中にいるだけなのです。企業が提供すべきは、追加コストとしてのサステナビリティではなく、生活をより良く、より豊かにするための「賢い選択肢」としてのサステナビリティだと言えるでしょう。
レポートの全文はこちらからダウンロードできます。
https://globescan.com/2026/02/17/the-japanese-healthy-sustainable-living-report-2025/



