ガザとヨルダン川西岸地区の今:ユニセフ事務局次長が語る希望と課題

停戦がもたらした小さな希望

停戦合意が発効して以来、ガザ地区の子どもたちの生活には少しずつ良い変化が見られるようになりました。以前よりも多くの命をつなぐ物資がトラックで搬入され、街の市場には野菜や果物、鶏肉、卵などが再び並び始めています。食料状況は改善し、飢きんは一時的に解消されたとのことです。

子どもたちが2年以上自由に遊べなかった状況を改善するため、レクリエーションキットも届き始めています。ユニセフはパートナーと協力し、160万人以上に清潔な飲み水を提供したり、70万人に毛布や防寒着を配って厳しい冬の寒さから守る支援を行いました。

さらに、ガザ市内のアル・シファ病院では小児集中治療室での診療が再開され、戦争中にワクチン接種を受けられなかった多くの子どもたちを対象とした予防接種キャンペーンも進められています。昨年10月の停戦発効以降、ユニセフの支援で新たに72カ所の栄養施設が作られ、ガザ地区全体の施設数は196カ所に達しているそうです。

倉庫で援助物資を扱う様子

依然として厳しい現実

しかし、現地の状況は依然として不安定で危険な状態が続いています。10月初旬の停戦発効以降も、ガザ地区では100人を超える子どもたちの命が失われたと報告されています。食料状況は改善したものの、10万人の子どもたちが急性栄養不良のままで、長期的なケアが必要です。

130万人もの人々が適切な避難所を緊急に必要としており、その多くは子どもたちです。家族はテントや破壊された建物での生活を強いられ、激しい雨や強風、凍えるような寒さにさらされています。冬が始まってから、少なくとも10人の子どもが低体温症で亡くなったという悲しい報告もあるそうです。

難民キャンプでテントの前に立つ家族

さらに、パレスチナにおける国際NGOの活動停止決定は、人道支援活動を大きく制限する恐れがあるとして、チャイバンさんは深い懸念を表明しています。

学びの場を取り戻す子どもたち

このような状況の中でも、希望の光はあります。ユニセフは教育分野のパートナーと協力し、25万人以上の子どもたちが学びを再開できるよう支援しています。

チャイバンさんは、デルバラハにあるユニセフ支援の仮設学習センターで、勉強に夢中になっていたアヤさんという女の子と話す機会があったそうです。アヤさんは、再び学び、友達と過ごせることをとても喜んでいて、将来は看護師になって戦争で病気になったり負傷したりした人々を助けたいと語っていました。彼女は、家々が再建され、学校が機能し、買い物ができる場所や散歩できる公園がある平和なガザを夢見ています。

仮設教室で学ぶ少女たち

ガザの子どもたちにとって、教室に戻ることは単なる学習の再開にとどまらず、心のケアにもつながる重要な要素です。2023年10月以降、ガザ地区全域で70万人以上の学齢期の子どもたちが正規教育の機会を奪われたままでした。ユニセフは今後、「学びへ戻ろう(Back to Learning)」と題した大規模な教育支援キャンペーンを発表する予定です。

ユニセフの取り組みと未来への提言

ユニセフは、停戦発効以降、国連世界食糧計画(WFP)とともに、延べ1万台以上のトラックでガザに支援物資を搬入してきました。これは、この間にガザに搬入された全人道支援物資の80%を占める量だそうです。両機関は栄養支援や学習支援、デジタル現金給付支援でも連携し、これまでに100万人以上に支援を届けています。

チャイバンさんは、アヤさんのような子どもたちの夢を実現するために、以下の3つのことが不可欠だと強調しています。

  1. 停戦の維持と進展:停戦の第2段階への移行は、人道的に必要不可欠です。これにより、大規模な復興や、子どもたちにとってより安全な環境の構築に取り組むことができるでしょう。イスラエル当局には、人道支援物資と商業物資の輸送ルートの拡大、ラファ回廊の双方向通行の再開と継続的な開放、そしてケレム・シャロムなどすべての検問所の同時稼働が求められています。また、ガザ地区内ではサラアルディン道路の再開通が輸送効率を劇的に改善すると期待されています。防寒対策を施したテントや、より耐久性のある仮設住宅の建設など、避難所の大規模な改善も急務です。子どもたちが学びを再開できるよう、仮設の学習スペースが必要ですし、水道網や電力網の緊急の修復も不可欠です。
    破壊された街並みとユニセフのテント

  2. ガザ行政国家委員会(NCAG)の機能強化:NCAGが必要な支援を受け、完全に機能することで、人道支援へのアクセス改善や早期復旧・復興への真の機会が生まれるでしょう。これは、今後の道のりにおいてパレスチナの人々の主体性を確保することにもつながります。

  3. 人道支援活動の予見性確保:次に何が起こるかを予測できる状況が確保されることで、支援は早期復旧や復興を本格的に動かし始める足がかりとなります。飲料水や衛生環境に必要な基本的な物資、いわゆる「デュアルユース(軍民両用)品」であっても、透明性を確保できれば、学習・教育関連物資と併せて搬入が許可されるべきです。ユニセフは、これらの活動を拡大する準備ができており、アクセスが許可され、停戦が確実に第2段階に移行すれば、直ちに支援を展開できる計画を用意しているそうです。

ガザ地区とヨルダン川西岸地区で暮らすパレスチナの子どもたちが求めているのは、同情だけではありません。今、必要なのは、温もりと安心・安全、食料、教育、そして未来をもたらす国際社会の決断です。私たちは、これらの子どもたちの運命を変える機会を無駄にしてはならないと、チャイバンさんは強く訴えています。

ユニセフ「ガザ人道危機 緊急募金」にご協力ください

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、ユニセフ「ガザ人道危機 緊急募金」を受け付けています。最も支援を必要としている子どもたちとその家族に支援を届けるため、ぜひご協力をお願いします。

https://www.unicef.or.jp/kinkyu/gaza/

ユニセフについて

ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。約190の国と地域で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。

https://www.unicef.org

日本ユニセフ協会について

公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。

https://www.unicef.or.jp

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