サードセクターが挑む「やっかいな問題」
近年、NPOやNGO、協同組合といった民間の非営利・協同型の組織、いわゆるサードセクターが、さまざまな社会課題の解決に積極的に関わっています。環境問題への取り組み、難民支援、オルタナティブな教育、生活困窮者のサポートなど、一筋縄ではいかない「やっかいな問題」に彼らは日々向き合っています。
2011年の東日本大震災の際も、サードセクターの人々が被災地で活躍しました。しかし、その活動の活発さや効果には地域差が見られたそうです。どうやら、サードセクターの人たちの社会ネットワーク、つまり人と人のつながりが、活動の成功を左右する重要な要因となっていたようです。

ネットワークの「ハブ」が果たす役割
大阪公立大学の菅野拓氏は、この社会ネットワークの構造を明らかにするため、ある興味深い調査を行いました。サードセクターのキーパーソンに「東日本大震災でお世話になったり、信頼している人を最大10人教えてください」と尋ね、そのつながりをたどるというものです。この調査から、とても特徴的な性質が浮かび上がりました。
多くの人は1人からしか指名されていませんでしたが、ごく稀にたくさんの人から指名される人、つまり「ハブ」が存在したのです。たくさんのつながりを持つごく少数のハブが存在するネットワークは「スケールフリー・ネットワーク」と呼ばれ、ランダムな攻撃に強く、情報が素早く伝わる特性を持っています。例えば、インターネットの世界では、Googleのような検索サイトがハブとなり、わずか数クリックで目的の情報にたどり着くことができますよね。
サードセクターの社会ネットワークも同様にハブが存在することで、情報が効率的に伝わり、知識や資源がスムーズに共有されることが分かりました。つまり、ハブは問題に応じて人と人をつなぎ、知識や資源を動員する重要な役割を担っているのです。ハブは、問題を明確にし、多様な個人や組織が持つ知識や資源を結びつけ、解決策を生み出すことを促進しています。
いのち会議が目指す「ハブ」が輝く未来
私たちはつい、問題がはっきりしていて解決策が見えている課題ばかりに「選択と集中」しがちです。その結果、問題自体が不明瞭で解決策もよくわからない「やっかいな問題」が置き去りにされてしまうことがあります。
いのち会議は、このような「やっかいな問題」を効果的に解決し続けるため、政府、民間企業、サードセクターの組織と協力し、ハブとなる人を見つける方法や、ハブが活躍できる組織の条件を明らかにしていきます。そして、2030年までにはハブがその役割を十分に果たせる環境を整え、それを政府の政策やSDGs、そしてSDGs後の目標に位置づけるよう、さまざまな関係者に働きかけていく予定です。
関連情報
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Stanford Social Innovation Review Japan「『やっかいな問題』の解き方としてのネットワーク:災害復興の鍵を握る「ハブ」は何をしているのか」
https://ssir-j.org/networks_as_a_way_to_solve_wicked_problems/ -
菅野拓(2020)『つながりが生み出すイノベーション ― サードセクターと創発する地域―』ナカニシヤ出版
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菅野拓(2022)「ネットワークをつむぐ―人と人とをつなぐ人の作用」、堂目卓生・山崎吾郎編『やっかいな問題はみんなで解く』世界思想社、所収
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いのち会議 公式サイト
https://inochi-forum.org/



