「親なきあと」問題、家族の85.5%が不安を抱える現実
調査結果から、障害のある子を持つ家族の85.5%が「親なきあと」に強い不安を感じていることが明らかになりました。しかし、具体的な準備に着手しているのは57.0%にとどまり、その内容は「預貯金・保険」などの資金面に偏りがちです。本人の意思や日常支援に関する情報を書き残しているのは、わずか1割程度という現状も浮き彫りになりました。多くの家族が「何を書けばよいかわからない」(26%)、「書き方がわからない」(20%)といった戸惑いを抱えているようです。

命をつなぐ情報が「ブラックボックス」に
服薬やこだわり、パニック時の対応、身体介助の方法など、障害のある方の生活を支える大切な情報の多くが、親の記憶にのみ蓄積され、体系化されていない実態も判明しました。親が不在になった際に情報が途絶えてしまうことは、財産の損失以上に当事者の生活基盤を大きく揺るがすリスクとなります。支援団体でも「親なきあと」に関する相談は頻繁に寄せられているものの、人手や資金不足から、十分な対応が難しいという課題も見えてきました。
デジタル化が未来を拓く?アプリへの高い期待と懸念
紙媒体の「親なきあとノート」に加えて、アプリ化への期待は非常に高いことがわかりました。家族の75%以上がアプリを「有効」と評価し、将来の備えとしてアプリに「関心がある」と回答した人は86%に上ります。特に期待される機能としては、「親族・支援者との情報共有」「情報の整理・共有のしやすさ」「更新・保管のしやすさ」が上位を占めました。

しかし、同時に「セキュリティ面の不安」(16%)、「データ消失のリスク」(15%)、「個人情報保護」(14%)といった懸念も根強く存在しています。このことから、高い信頼性と強固なセキュリティ体制が、アプリ普及の鍵となるでしょう。
継続的なサポート体制が成功の鍵
アプリの利用を促進するためには、どのような支援が必要なのでしょうか。家族からは「利用者への継続的なサポート体制整備」(28%)、「自治体・施設等との連携」(24%)、「専門家による情報管理アドバイス」(24%)が求められています。デジタル機器の操作に不安を感じる親世代への使い方講習会や、官民が連携した伴走型のサポートが不可欠だと言えそうです。
専門家が語る「親なきあと」への思い
発表会には、行政書士・社会保険労務士の渡部伸氏と、一般社団法人親なきあと相談室関西ネットワーク代表理事の藤井奈緒氏が登壇し、質疑応答の中でそれぞれの思いを語りました。
渡部伸氏は、「地域の支援者とつながること、本人を支えるチームを作ることが最も大切です。ノートからアプリになることで、書くのがおっくうだったり、状況が変わったときの更新が面倒だったりする不便さが解消され、早い段階から『地域に託していく』という決心を後押しできることを期待しています」と述べました。
藤井奈緒氏は、「障害のある娘を育てる母として、また専門家として『親なきあと』への備えの重要性を痛感しています。ノートを一人で書き上げるのは大変な作業ですが、同じ悩みを持つ仲間と集まり、笑いながら励まし合いながら少しずつ更新していけばよいのです。万が一何も準備が進まないとしても、人とのつながりさえあれば周りが助けてくれます。無理のない範囲で、やれることから始めていきましょう」と、家族に寄り添うメッセージを送りました。

「支援引継ぎカルテ」開発へ!2026年の新たな挑戦
デジタル終活推進協議会は、日本財団と連携し、デジタル版「支援引継ぎカルテ(仮称)」の開発と制度化を推進しています。親が長年蓄積してきた日常支援や療育に関する情報をICTで次の支援者へ継承する仕組みを構築し、将来的には公的なインフラとして活用されることを目指しています。

2026年には、「支援引継ぎカルテ」に向けた要件定義と開発が進められる予定です。家族や支援者、専門家によるワーキンググループが設置され、行政や国を交えた研究会も通じて、必要な機能の整理や政策提言が行われます。
さらに、「親なきあと」に関する具体的な不安に対し、専門家や家族、施設の知見を統合したAIチャットボットの構築も計画されています。24時間いつでも、匿名で低負担で情報にアクセスできる相談窓口を整備することで、家族の準備を早め、不安を軽減することを目指します。また、このチャットボットは自治体相談員や施設支援者の情報データベースとしても活用され、支援の平準化や説明の負担軽減にもつながるでしょう。
今回の調査結果は、4月以降にデジタル終活推進協議会のホームページで公開される予定です。



