支援現場が直面する「3つの壁」
今回の調査は、全国の精神保健福祉センター69カ所を対象に行われ、なんと97%という高い回収率で、現場の切実な声が集まりました。調査結果からは、支援現場が抱える「3つの壁」が見えてきました。
1. 「対応の壁」:身体と精神、両面支援が難しい
相談に対応しているセンターのうち、身体面と精神面の両方に対応できる施設はたった18%でした。さらに、16%の施設は「両面とも対応が難しい」と回答しており、複合的な症状を持つ摂食症患者さんへの支援の難しさがうかがえます。

2. 「知識・連携の壁」:専門リソースが足りない!
対応が難しい理由としては、「ケースが重症化・複雑化していること」が最も多く、次いで「専門知識の不足」や「紹介できる医療機関がない、または連携が不十分であること」が挙げられました。現場が孤立し、十分な支援を提供しきれていない現状が浮き彫りになっています。

3. 「ニーズの壁」:拠点病院への期待が圧倒的
今後、どのような支援が必要かという問いに対しては、「摂食症外来や拠点病院の整備」が圧倒的なニーズとして挙げられました。情報提供や医療機関との連携体制の強化、家族支援プログラムや研修会へのニーズも高く、専門的な支援体制への切実な願いが込められています。
94%が「拠点病院は必要」と回答!
特に注目すべきは、「摂食症拠点病院は必要だと思いますか?」という問いに対して、未設置エリアの94%が必要だと回答したことです。これは、地域における専門医療機関の不足が深刻で、多くの人々が拠点病院の設置を強く望んでいることの表れと言えるでしょう。

全国から専門家が集結!地域支援の未来を議論
この調査結果を受けて、2026年2月22日には報告会が開催され、約90名が参加しました。全国の精神保健福祉センターや拠点病院の関係者が集まり、それぞれの立場から現状を共有し、今後の支援の方向性について活発な議論が交わされました。

報告会では、全国精神保健福祉センター長会副会長の平賀正司氏が地域の中核機能と包括的支援の重要性を、摂食障害全国支援センター長の井野敬子氏が全国的な医療水準の底上げに向けた取り組みについて報告。日本財団の林美彩氏は、情報が氾濫する中で適切な医療へアクセスできない現状を課題視し、本調査が悩む方々の背中を押すきっかけになることを期待しました。
また、拠点病院の最前線からは、栃木県拠点病院の獨協医科大学 精神神経科教授 古郡規雄氏が低年齢化する患者への早期対応と多職種チームによる支援体制を紹介。千葉県拠点病院の国立国府台医療センター副院長・心療内科診療科長 河合啓介氏は、「受診先が見つからない」を解消する医療連携の重要性や、若年層に届くSNS(LINE等)活用の必要性を提言しました。
今後の展望:誰もが適切な支援を受けられる社会へ
今回の調査結果は、詳細なレポートとしてまとめられ、2026年4月以降に協会ホームページで公開される予定です。また、厚生労働省をはじめとする関連省庁へ報告され、住む地域に関わらず適切な支援が受けられる社会の実現に向け、具体的な提言が進められていくとのことです。
一般社団法人日本摂食症協会は、この調査結果を受けて「診療可能な施設がない、あるいは、医療機関と連携が不十分な地域が多く、支援の地域格差が明らかになった。支援拠点病院の存在は治療可能な施設数の増加と医療レベルの向上や、精神保健支援センターが行っている機能をバックアップ、レベルアップできるだろう。」と総括しています。
協会名称変更と「摂食症」について
ちなみに、一般社団法人日本摂食障害協会は、2025年10月18日に「一般社団法人日本摂食症協会」へと名称を変更しました。これは、「障害」という言葉が回復しないイメージを与え、受診をためらう原因になるという指摘があったためです。適切な治療で回復が期待できる病気であることを伝えるため、「摂食症」という名称に変更されました。
摂食症は、心理的な原因で食の異常をきたす疾患で、拒食症(神経性やせ症)と過食症があります。患者の95%が女性であり、特に拒食症(神経性やせ症)の死亡率は精神科疾患の中でも異常に高いと言われています。コロナ禍以降、低年齢化も進んでおり、早期の適切な支援が非常に重要です。
誰もが安心して相談し、適切な支援を受けられる社会になるよう、今後の取り組みに注目していきたいですね。
団体概要
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名称: 一般社団法人日本摂食症協会
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理事長: 鈴木 眞理
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所在地: 東京都千代田区紀尾井町3-33
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公式HP: https://www.jafed.jp/



