ガイドライン策定の背景と国土交通省の懸念
2025年2月14日に開催された国土交通省の第42回不動産部会では、遊休不動産や所有者不明土地の増加を抑える手段として、有料引取サービスが一定の評価を受けました。
しかし、宅建業法などの規制が及ばない取引形態であることから、以下の3つの懸念点が指摘されました。
- 取引の安全性の確保: 引取料を支払ったのに所有権移転登記がされないといったトラブルの可能性。
- 不動産の適正価格での取引機会の確保: 本来なら適正価格で売却できる不動産が有料引取に回り、機会が失われる可能性。
- 引取後の不動産の適正な管理の確保: 引取後の不動産が適切に管理されず、将来的に管理不全土地や所有者不明土地が増える可能性。

これらの懸念を受け、協議会は「業界の健全な育成」と「消費者の保護」を最優先に、ガイドラインの策定と課題整理を進めてきました。
改訂された「不動産有料引取事業ガイドライン」のポイント
2026年2月に公表された「不動産有料引取事業ガイドライン」は、上記の3つの懸念を解消するために検討が重ねられました。
このガイドラインは、現在国土交通省との連携のもと、有識者を交えた検討会・勉強会の開催も検討されているとのことです。
1. 一般消費者向け安全性チェックリスト
有料引取サービスの利用を検討している方は、以下の7つの項目を必ず確認することが推奨されています。不安な場合は、第三者や専門家への相談も検討しましょう。
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会社の実在(事務所住所・電話・メール等が明記されていますか?)
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対応体制(対面またはオンラインで面談ができますか?)
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契約書内容(費用・免責・返金条件が契約書に明確に記載されていますか?)
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前受金(契約前に使途不明な金銭を請求されていませんか?)
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宅建免許(宅地または建物の場合、有効な宅地建物取引業の免許をもっている法人ですか?)
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苦情対応(問い合わせ・解約・返金の窓口は準備されていますか?)
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管理方針(引取後の不動産の活用・管理方針が開示されていますか?)

2. 協議会加盟事業者の遵守事項
協議会に加盟する事業者は、「引き取り時」「保有時」「売却時」の各段階で行動指針を遵守し、安心してサービスが利用できるよう努めています。
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引き取り時のルール:費用・条件の事前明示、前受金の原則禁止、所有権移転や負担内容の明確化、誇大広告の禁止、セカンドオピニオンの推奨など。
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引き取り後の保有・管理時のルール:適正な管理と迅速な対応、苦情・要望への誠実な対応、環境・防災・景観への配慮、管理方針の明示など。
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引き取り後の活用・売却時のルール:地域社会の意見尊重、不適切な転売の防止、活用方針の明示、犯罪収益移転防止法等の遵守、利用者の国籍・利用目的の確認など。

3. 有料引取事業者の安全基準
協議会への加盟有無にかかわらず、有料引取事業者には以下の10項目の安全基準の遵守が求められています。
- 宅地・建物を取り扱う場合、相談受付・所有権移転登記を行う事業者のいずれかが宅地建物取引業者であること。
- 引取費用や条件について、契約前に明確な提示と説明をおこなうこと。
- 契約不適合責任の免責または条件の有無にかかわらず、その内容について事前に説明し、契約書等に明記すること。
- 契約締結前に「調査費」「手付金」「申込金」等の名目で金銭を請求することを禁止し、前受金の受領を原則禁止とすること。また、契約不成立時には受領済の金銭を全額返金すること。
- 所有権移転時、依頼者が司法書士を選任できるなどの選択余地を確保すること。
- 対面・オンラインいずれかの面談ができる環境を確保していること。
- 引取後の不動産の管理方針を、依頼者の求めに応じ開示すること。
- 引取後の不動産について、適正な管理と迅速な対応に徹すること。
- 契約に際しては、依頼者および引取後の利用予定者の国籍や利用目的を適切に確認し、内容を記録・管理すること。
- 引取後の不動産の再生・活用において、犯罪収益移転防止法等を遵守すること。

今後の取り組みと国土交通省との連携
一般社団法人 不動産有料引取業協議会は、今後も以下のような取り組みを進めていく予定です。
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国土交通省と連携し、有識者を交えた検討会・勉強会の開催を検討中。
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協議会加盟企業の質の担保と、加盟企業の募集。
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利用者への透明な説明責任の徹底。
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行政・専門家・地域との連携強化。

一般社団法人 不動産有料引取業協議会について
協議会は「業界の健全な育成」と「消費者の保護」を目的として、2023年11月に任意団体として発足し、2025年12月に一般社団法人化しました。
所有者不明土地等対策モデル事業への参画
令和7年度の所有者不明土地等対策モデル事業に採択され、大分県中津市で市町村と連携し、有料引取サービスのスキームを導入した利活用手法の実証に取り組んでいます。これは、地域の安全・安心な住環境の確保と土地資源の循環的な活用を目指すものです。

ガイドラインをはじめとした自主規制の改善と、加盟事業者の増加にも力を入れています。設立時は3社だった加盟企業も、現在は5社に増え、今後も理念を共有する事業者との連携を拡大していく方針です。
全国の自治体や関連事業所での啓蒙活動も積極的に行っており、講演やセミナー登壇の実績もあります。
有料引取サービスに関する相談窓口も設けており、質問や加盟、講演・取材依頼はinfo@fudosan-kyogikai.comまで問い合わせが可能です。
参考資料
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国土交通省 第42回社会資本整備審議会 産業分科会 不動産部会(2025年2月14日)資料
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国土交通省 第43回社会資本整備審議会 産業分科会 不動産部会(2026年2月26日)資料



