デジタル化の進む社会で、携帯電話を持てない人々の現実
現代社会ではスマートフォンの保有率が約90%に達し、行政もデジタル化を推進しています。しかし、その一方で携帯電話を持てない「通信困窮層」が存在し、彼らが行政支援の入り口で困難に直面していることが、株式会社アーラリンクの調査で明らかになりました。同社は、料金滞納などで携帯電話を持てなかった男女682名を対象に、行政支援へのアクセスと通信手段の関係性について実態調査を実施しました。
「誰一人取り残さないデジタル化」の難しさ
デジタル庁は「誰一人取り残さないデジタル化」を掲げていますが、通信手段を持たない人々は、行政手続き、就労、住居確保といった様々な場面で「スタートラインに立てない」という深刻な状況に置かれています。今回の調査は、こうした制度の狭間にいる人々の実態を可視化し、より実効性のある行政DXのあり方を考えるきっかけとなるでしょう。
デジタル庁が公開している「行政手続等の棚卸結果等について」は以下のリンクから確認できます。
https://www.digital.go.jp/resources/procedures-survey-results
4割が「相談先が分からなかった」と回答
携帯電話を持てなくなった際、どこに相談すればいいかという問いに対し、最も多かった回答は「相談先が分からなかった(40.3%)」でした。次いで「市役所・区役所などの行政窓口(22.8%)」が挙げられています。

この結果は、通信手段を失うことで社会とのつながりや情報入手経路そのものを喪失し、どこに相談すべきかさえ分からなくなるという、デジタル社会特有の孤立構造を示しています。
支援を求めても「手続きの壁」に阻まれる現実
連絡先がないために行政窓口での手続きがスムーズに進まなかったり、公的支援を得にくかったと感じるかという質問には、全体の42.2%が「困難を感じた」と回答しました。実際に支援を求めて動いた人に限ると、この割合は64%にまで上昇します。

「電話しても『折り返します』と言われたまま連絡が来なかった」といった声や、「支援先に連絡するためテレホンカードを持ち歩き、公衆電話の場所を覚えるしかなかった」という経験談もあり、連絡先を持てないことが支援の遅延を招き、助けを求める気持ちすら折れてしまう現実が浮き彫りになっています。
数時間で済むはずの手続きに「半年以上」
携帯電話を持てない状態から契約にたどり着くまでに、どのくらいの期間がかかったかという問いに対しては、41.8%が「半年以上」、約10%が「3ヶ月〜半年」と回答しました。

通信手段を失うことは、仕事探し、住まい探し、支援手続きのすべてを滞らせ、社会復帰への大きな妨げとなります。「働かないと契約できない。契約がないと働けない。もう生きている意味がないと感じたこともあった」という声もあり、この問題の深刻さがうかがえます。
携帯電話は「社会参加への必須インフラ」
今回の調査結果は、携帯電話が単なる贅沢品ではなく、行政支援や就労、住居、福祉への「入口」であるという事実を示しています。通信を失った人々に「連絡手段」を保証することは、個人の再起支援、行政コストの最適化、そして社会全体のデジタル化の底上げにつながる、合理的な社会投資と言えるでしょう。
今後、行政DXを真に機能させるためには、「通信にアクセスできない層の存在」を前提とした制度設計が不可欠です。
調査概要
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調査名: 携帯電話番号不保持による行政支援へのアクセスと通信手段の関係性に関するの実態調査
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有効回答数: 683名
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調査期間: 2026年1月16日~1月19日
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調査方法: 全国の「誰でもスマホ」利用者へWEBアンケートフォームを送付
株式会社アーラリンクについて
株式会社アーラリンクは、通信困窮者支援事業「誰でもスマホ」を展開しています。
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会社名: 株式会社アーラリンク
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本社: 〒170-0013 東京都豊島区東池袋3-21-14 NTT新池袋ビル9階
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代表取締役: 高橋 翼
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事業内容:
- 電気通信事業
- 電気通信設備の貸与、又は販売
- 通信機器及び周辺機器に関する企画
- 上記各号に附帯関連する一切の業務



