2034年までに42億ドル規模へ!驚異的な成長予測
日本の炭素クレジット市場は、2025年に4億9,185万米ドルの規模でしたが、2034年までにはなんと42億9,831万米ドルへと拡大する見込みです。これは、2026年から2034年の予測期間で年平均成長率(CAGR)27.24%という、目覚ましい成長を示すものです。
この急成長を牽引するのは、主に次の3つの要素です。
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政府による大規模な公共投資を伴う「グリーン・トランスフォーメーション(GX)」戦略
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共同クレジットメカニズム(JCM)を通じた30カ国との国際パートナーシップの拡大
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東京証券取引所炭素クレジット市場や東京炭素クレジット市場といった、国内炭素クレジット取引プラットフォームの開発
これらの戦略的な取り組みが、日本の炭素クレジット市場のシェアを大きく広げていくと期待されています。
強制排出量取引制度の開始と技術革新
2026年度からは、強制排出量取引制度が始まる予定です。これにより、国全体の排出量の約60%を占める300から400の主要企業が対象となり、自主的なメカニズムから、より義務的なコンプライアンスベースのメカニズムへと移行することで、検証済みの炭素クレジットに対する需要が大きく高まるでしょう。
また、人工知能(AI)、ブロックチェーン、衛星モニタリングといった最新技術の統合も、市場を強力に後押しします。これらの技術は、炭素クレジットプロジェクトの検証プロセスや市場の透明性を高め、日本の野心的なネットゼロ目標達成を支援しつつ、新たなビジネスチャンスを生み出すことがきっと期待されます。
AIを活用したシステムは、衛星画像やブロックチェーン技術と連携し、炭素クレジットプロジェクトの検証精度を向上させ、スマートコントラクトを通じてコンプライアンスを自動化。大量のデータを分析して最適な取引戦略を導き出すなど、多岐にわたる活躍を見せています。
成長を加速する主要トレンドと国際連携
政府主導のGX戦略と巨額投資
日本政府は、低炭素経済への移行を加速するため、10年間で1兆米ドルもの大規模な投資を約束しています。これは、国内および国際的な二酸化炭素除去プロジェクト、CO2輸送パイロット、製鉄におけるバイオコークス導入、低炭素アンモニア輸入、クリーン水素生産の拡大などを支援するものです。
2024年に設立されたGX加速化機関は、財政メカニズムや排出量取引制度の運営、炭素賦課金の徴収に関する専門的な支援を提供し、政府省庁間の連携を強化しています。さらに、2024年2月には世界で初めてソブリン・トランジション債を発行し、2025年4月までに376億米ドルを調達してグリーンインフラと技術開発に資金を供給しました。日本企業の温室効果ガス排出量の50%以上を占める747社から成るGXリーグも、官民連携を促進する重要なプラットフォームとして機能しています。
共同クレジットメカニズム(JCM)を通じた国際パートナーシップ
JCMは、日本が先進的な脱炭素技術、資金、専門知識を開発途上国に提供し、その結果削減された排出量を両国間で共有する仕組みです。2025年7月現在、日本はアジア、アフリカ、ラテンアメリカの30カ国とJCMパートナーシップを結んでおり、2025年4月にはJCM実施機関も設立されました。日本は2030年までに1億トンCO2換算のクレジット累積を目指しています。
包括的な国内炭素取引インフラの開発
国内では、炭素取引インフラの整備も進んでいます。2023年10月に開設された東京証券取引所の炭素クレジット市場には、GXリーグの主要メンバーを含む約250社が参加し、J-クレジットの取引と価格形成を支えています。さらに、東京都は2025年4月にブロックチェーンベースのデジタルプラットフォーム「東京炭素クレジット市場」を導入し、中小企業も炭素エコシステムに参加しやすくなっています。これらのプラットフォームは、AIやブロックチェーン検証、衛星モニタリングを統合し、強固な監視とデータ透明性を保証しています。
市場の課題と今後の展望
このように成長著しい日本のカーボンクレジット市場ですが、いくつかの課題も抱えています。主な課題としては、需要の高まりに対して国内の高品質な炭素クレジットの供給が限られていることや、プロジェクト実施コストが高く、J-クレジットの価格が他国と比較して高水準にあることなどが挙げられます。
また、義務的排出量取引制度(GX-ETS)の設計と実施に関する政策の不確実性も課題の一つです。オフセット利用に10%の上限が提案されていることも、供給の柔軟性を低下させ、コストを上昇させる可能性があります。国内クレジット価格の高さは、特に国際競争に晒される産業において、企業のコンプライアンス費用を押し上げ、競争力を損なう懸念があります。
市場のセグメンテーション
市場は、タイプ別ではコンプライアンスとボランタリーに、プロジェクトタイプ別では回避・削減プロジェクトと除去・隔離プロジェクト(自然ベースおよび技術ベース)に分類されています。最終用途産業としては、電力、エネルギー、航空、運輸、建設、産業などが含まれます。地域別では、関東、関西・近畿、中部、九州・沖縄、東北、中国、北海道、四国といった主要な地域市場に分けられています。
競争環境
日本の炭素クレジット市場は、商社、金融機関、テクノロジー企業、専門の炭素プロジェクト開発者が入り混じる、活発な競争環境です。大手コングロマリットは、国際ネットワークと資本力を活かして戦略的パートナーシップや海外プロジェクトへの投資を通じてクレジットを確保しています。国内プレイヤーは、革新的なJ-クレジット手法や自然ベースソリューションの開発に力を入れています。金融機関はマーケットメイクサービスや取引インフラを提供し、テクノロジープロバイダーはブロックチェーンやAIを活用して透明性と効率性を高めています。2026年度からの義務的コンプライアンス枠組みへの移行は、市場競争をさらに激化させることでしょう。
カーボンクレジットって何?
そもそもカーボンクレジットとは、温室効果ガス(GHG)の排出量1トン分に相当する削減量または吸収量を数値化し、取引可能な形で証券化したものです。これは、企業や国が自らの排出量を削減するインセンティブを与えたり、削減が難しい場合に外部から削減量を調達したりすることで、地球全体のGHG排出量削減目標達成に貢献することを目指しています。
クレジットには主に「排出権」と「オフセットクレジット」の2種類があります。オフセットクレジットは、再生可能エネルギー導入、森林保全、省エネルギー化などのプロジェクト活動によって実現されたGHG排出削減・吸収量を基に発行されます。これらのプロジェクトは、クレジット収入がなければ実現しなかった削減である「追加性」が条件とされます。
クレジット発行には、国連のクリーン開発メカニズム(CDM)やVCS(Verified Carbon Standard)、Gold Standard、J-クレジットなどの厳格な認証プロセスが不可欠です。これにより、クレジットの信頼性が保証され、市場での価値が確立されます。
市場は「規制市場(コンプライアンス市場)」と「自発的市場(ボランタリー市場)」に大きく分かれます。規制市場では、法律や条約に基づき排出削減義務を負う企業が取引を行い、自発的市場では、排出削減義務のない企業や個人が、CSRやESG投資の一環として、またはカーボンニュートラル達成のために自主的にクレジットを購入します。
カーボンクレジットは、排出削減コストの効率化や途上国での気候変動対策プロジェクトへの資金供給など、多くの意義を持ちます。しかし、「グリーンウォッシング」の懸念や、追加性・永続性の保証、測定の困難さといった課題も指摘されています。これらの課題を解決し、市場の透明性と信頼性を高めるために、国際的なルール整備や認証制度の強化が進められています。
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