「見えない貧困」を、見つめよう
毎年2月20日は、国連が定めた「世界社会正義の日」です。この日は、社会正義や貧困撲滅について、みんなで考える大切な日。そんな日に、認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンが、日本国内で広がる「見えない貧困」の現状を伝えています。
近年続く物価高は、特に低所得のひとり親家庭にとって、日々の暮らしをさらに厳しくしています。食費を削らざるを得ない家庭も多く、「十分な食事がとれない」という声が支援現場から数多く寄せられているとのことです。

“普通に見える家庭”の裏にある、貧困の影
日本では、約9人に1人の子どもが相対的貧困の状態にあると言われています[1]。しかし、この貧困は、なかなか私たちの目には見えにくいものです。子どもたちは学校に通い、スーパーで買い物をしている家庭も多いでしょう。一見「普通の家庭」に見えるからこそ、その裏に隠された空腹や困窮は気づかれにくいのです。
グッドネーバーズ・ジャパンが支援現場で強く感じているのは、この「見えにくい」がゆえに、貧困が深刻化しやすいという現状です。
子どもの貧困は、社会全体の問題
子どもの貧困は、個人の問題にとどまらず、社会全体に大きな影響を与えます。
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成長期に必要な栄養が不足し、健康に悪影響が出る
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学習の機会が限られ、将来の選択肢が狭まる
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不安定な雇用や低所得につながり、貧困が次の世代にも引き継がれる
これらは、日本社会全体の安定性にも関わる重要な課題なのです。

貧困に陥る背景には、多様な要因があります。例えば、フルタイムで働いても収入が低く、生活が苦しいケースや、ひとり親家庭が仕事と子育ての両立に苦しみ、安定した収入を得にくい状況などです。また、養育費を受け取れないことも少なくありません。これらの問題は、個人の努力だけで解決できるものではなく、社会の仕組みや働き方など、構造的な問題が大きく影響しています。つまり、貧困は「一部の家庭の問題」ではなく、社会全体で取り組むべきテーマなのです。
当事者の声からわかる、厳しい現実
グッドネーバーズ・ジャパンは、日本の子どもの貧困問題に危機感を抱き、2017年からひとり親家庭を対象としたフードバンク事業「グッドごはん」を運営しています。日本のひとり親家庭の貧困率は44.5%と、約半数が相対的貧困の状態にあり[1]、十分な食事がとれない家庭も少なくありません。
「グッドごはん」を利用する家庭からは、次のような切実な声が寄せられています。
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「子どもが3人いますが、発達障害児もいるため通院などがあるので正社員での勤務が難しく、現在パート勤務です。パート勤務だと経済的に厳しいが勤務時間は増やせない。そのジレンマは常に抱えています。中学生もいるためもう少し栄養のあるものも食べさせたいですが、物価高で節約をしないといけない状況なのも不安です。」
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「現在、鬱病の影響で働きたくても働くことができず、6歳と8歳の子どもを私1人で育てています。夏はガス代を節約するため水シャワーで過ごしましたが、冬は寒さが厳しく、子どもたちに『お風呂に入りたい』と言われても応えてあげられない日もあります。一緒に買い物に行っても、子どもが果物やパンを欲しがっても買ってあげられず、胸が締めつけられる思いです。 体力的にも精神的にも限界を感じ、毎朝目が覚めるたびに『今日をどう乗り越えよう』と不安でいっぱいになります。」
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「夫からのDV被害にあい、母子寮に避難してきました。自分自身がいま働くことができない体調のため、生活費は貯金を切り崩して生活しています。子どもには3食のご飯や清潔な衣服を最低限用意したいと思い、頑張ってきましたが、限界を感じています。」
さらに、昨今の物価高は、生活の苦しさを一層深刻にしています。過去3ヶ月間に「グッドごはん」の利用を申し込んだ家庭からは、以下のような声が聞かれました。
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「とにかく、お腹いっぱい好きな時に食べさせてあげたい。養育費がもらえなくなり、自身の収入だけでは生活がきつい。とにかく物価が高くて、何を買うにも手が出ない時が多々あり、このままどうなっちゃうのかな?って思う。」
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「物価は上がる一方なのに給料は上がらずきついばかりで、このままこどもを育てていけるのか不安です。」
こうした「見えない貧困」の背景には、具体的な家庭の苦しい現実があります。そして、実態が見えにくいからこそ、周囲からの不理解や偏見に苦しむ当事者も多く存在しているのが現状です。
グッドネーバーズ・ジャパンが「グッドごはん」利用家庭に行った調査[2]では、「ひとり親だから責任感がない」という理由で雇い止めにあったり、「母子家庭という理由で賃貸住宅を追い出されたり、不当な請求をされたりした」といった声が寄せられています。こうした周囲の理解不足は、当事者が支援を求めることをためらわせ、孤独感や孤立を深める原因にもなりかねません。
同調査では、「生活や子育てでの困りごとについて誰かに相談したり助けを求めたりすることに、ためらいや抵抗を感じるか」という質問に対し、「かなり感じる」「やや感じる」と答えた人が合わせて5割にものぼりました。

貧困の深刻化を防ぐためには、誰もが気軽に支援に手を伸ばせるような環境を社会全体で整えていくことが求められています。
支援ニーズの増加が示す、厳しい現状
グッドネーバーズ・ジャパンが実施する「グッドごはん」では、孤独を感じやすいひとり親家庭を支えるため、対面での食品配付を行っています。2026年1月現在、首都圏・近畿・九州の約30〜40か所の拠点で、ひと月あたり5,000世帯を超えるひとり親家庭に食品を提供し、子どもたちの「生きる土台」である食を支えています。

事業開始以来、「グッドごはん」の食品配付世帯数は年々増加の一途をたどっています。これは、支援を必要としている家庭が絶えないという厳しい現実を映し出していると言えるでしょう。

「見えない貧困」を、見つめよう
世界社会正義の日(2月20日)は、すべての人々が公正に生きられる社会を目指し、貧困や差別、排除といった課題に向き合うことを呼びかける国際デーです。グッドネーバーズ・ジャパンは、支援現場に立つからこそ伝えたいメッセージがあります。
同じ日本で、お腹を満たすことすら難しいほど貧困に苦しむ子どもたちが今日も暮らしています。その状況は外からは見えにくく、気づかれにくいからこそ、この「見えない」現実について、多くの人々と一緒に考える機会が広がることを願っています。そして、同じ社会に生きる私たち一人ひとりに“できること”が必ずあると信じています。
私たちにできる3つのこと
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知る
子どもの貧困の現状や、低所得のひとり親家庭が置かれている状況などの社会課題について知ることは、実像を理解するうえで大切な一歩です。この記事を読むことも、その一歩となります。 -
伝える
ご家族や友人、職場など身近な方々と現状について話し、情報を共有し合うことは、見えにくい貧困への理解を身近なところから広げていく助けになります。 -
行動する
寄付、企業としての協賛、選挙への参加、ボランティアなど、社会課題と関わる方法はさまざまです。どのような形であっても、その一歩が集まることで、子どもたちにとって大きな支えとなります。
グッドネーバーズ・ジャパンは、一人でも多くの子どもが「お腹いっぱいごはんを食べる」という当たり前を失わず、貧困に苦しむことのないよう、「グッドごはん」をはじめとした活動を継続していきます。世界社会正義の日に、どうか、日本の子どもたちの貧困の今を一緒に見つめてください。そして、すべての子どもたちの今と未来が守られていくよう、社会の皆さまと共に歩んでいけることを願っています。
関連情報
- [1] 厚生労働省「2022年 国民生活基礎調査」: https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/index.html
フードバンク「グッドごはん」へのご寄付について
「グッドごはん」の活動は、皆さまからの温かいご寄付によって支えられています。より多くのひとり親家庭へ支援を届けるため、活動へのご寄付を受け付けております。ご関心をお寄せくださる方は、下記ページをご覧ください。
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食品の現物寄付について: https://www.gnjp.org/work/domestic/fooddonation/
団体について
特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパンは、国際組織グッドネーバーズ・インターナショナルの一員として、2004年に開設されました。「子どもの笑顔にあふれ、誰もが人間らしく生きられる社会」を目指し、国内外の子ども支援を行っています。公益性の高い団体である「認定NPO法人」として東京都から認可を受けています。
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facebook : https://www.facebook.com/gnjapan
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Instagram: https://www.instagram.com/gn_japan/
ひとり親家庭のためのフードバンク「グッドごはん」とは
「グッドごはん」は、ひとり親家庭等医療費受給者証を持つ、所得が限度額未満のひとり親家庭を対象に、食品を毎月無料で配付する事業です。2017年9月の事業開始以降、延べ17万を超える世帯に食品を提供してきました。
首都圏、近畿および九州における約30~40か所*の配付拠点にて、企業や個人の寄付によって集まったお米や調味料、レトルト食品、お菓子など、約10,000円相当のカゴいっぱいの食品をひとり親家庭に配付しています。
※生活保護受給中の方は対象外です
- 「グッドごはん」について詳しくはこちら: https://www.gnjp.org/work/domestic/gohan/
フードバンク「グッドごはん」を利用する低所得のひとり親家庭を対象とした各種調査について
グッドネーバーズ・ジャパンは、「グッドごはん」を利用する低所得のひとり親家庭を対象に実施してきた各種調査の一覧を以下のページで公開しています。食事・収入・子どもの体験・孤立の実態など、ひとり親家庭が直面する多様な課題について、定量・定性的に可視化されていますので、ぜひご覧ください。
- 各種調査について詳しくはこちら: https://www.gnjp.org/survey/



