経験を語る「人生ドラマグラフ」と「ひきこもりは人生の勲章」
イベントでは、自身もひきこもり経験がある演出家の宮本亞門さんがファシリテーターを務めました。お笑い芸人の山田ルイ53世さんとインフルエンサーのまいきちさんも登壇し、それぞれの「人生ドラマグラフ」を使って過去の感情の浮き沈みを振り返りました。
山田ルイ53世さんは、完璧主義が故に中学2年生から6年間ひきこもった経験を語りました。インターネットもSNSもなかった当時、部屋の窓から見える風景が唯一の外界との接点だったそうです。ひきこもりながらも「やればできる」と考えていた山田さんは、成人式のニュースを見て「同世代が遠くに行ってしまう」と感じたことをきっかけに、「とりあえず」を重ねて外に出られるようになったと話しました。「ひきこもりは誰でも止まりうる双六の1コマ」と表現し、「行き当たりばったりでも、目の前の小さな一歩を進めれば素晴らしいこと」とメッセージを送りました。
まいきちさんは、幼少期からのいじめやコロナ禍での罹患をきっかけに不登校になり、ひきこもった経験を打ち明けました。否定的な声に苦しみ、自傷行為を繰り返していた時期もあったそうです。しかし、ある日鏡を見た時に「頑張っている自分を守ってあげないと」と感じ、芸能界で生きることを決意し、自傷行為をやめたと語りました。「幸せの物差しは周りと比べた自分ではないはず。見えない所ではみんな辛い思いや悩みを持っています」と話し、自身の経験を理解しようとしてくれるこの空間に活力をもらえたと感謝を伝えました。

宮本亞門さんも、幼少期から「同じにしないといけない」ことに違和感を覚え、高校時代に不登校になった経験があります。部屋にこもってクラシックを聴き続けた経験が、現在の演出家としての仕事につながったと話します。「不登校は、自分を守ろうと意思を持って決めることです。人と違うのは良いことで、新しい発想を持てる可能性があります」と語り、「ひきこもりは、次の人生やきっかけを見つけるための素晴らしい経験」「人生の勲章」であると強調しました。
多様な形で「ひきこもり」を伝える取り組み
イベントでは、ひきこもり経験を基にしたアートを紹介するバーチャル展覧会も紹介されました。
また、ひきこもりの経験談を基にしたショートドラマ「こもリアル」のダイジェストも上映されました。ドラマは全6話で構成され、監督の山田英治さんや出演した俳優、エピソードを提供した経験者がそれぞれの思いを語りました。山田監督は、伝わりづらい孤独や孤立を多くの人に知ってもらうため、SNSで拡散できるショートドラマを制作。2025年12月に公開された動画は、1ヶ月で総数200万回再生を超える反響を呼んでいます。
経験者たちはドラマを通して自分の経験を客観的に見つめ直し、「当時の家族の思いが理解できた」「当時の自分を知るきっかけになった」といった新たな発見があったと話しました。
全国に広がる「心の居場所」と未来へのメッセージ
イベント後半では、VOICE STATION事務局メンバーの東善仁さんと山森彩さんが、「ひきこもりVOICE STATION全国キャラバン」を振り返りました。神奈川、高知、秋田、新潟、奈良、大分の6都市で開催されたキャラバンでは、当事者や経験者、家族、支援者など、さまざまな立場の人が登壇し、それぞれの経験や思いを伝え合いました。会場と各都市の団体が運営する居場所がオンラインで中継され、活動内容や印象深いエピソードが紹介されました。
神奈川では宮本亞門さんによるワークショップが実施され、他の5都市では東さんと山森さんによるワークショップが行われました。特に5都市では、ひきこもり当事者の思いが書かれた「ボイスカード」をもとに、地域の資源を活用して願いを叶えるアイデアを参加者が出し合い、「みらい新聞」にまとめるというユニークな取り組みも行われました。

東さんは「居場所は当事者や家族だけでなく、支援者の拠り所にもなっています。色んな人が気軽に立ち寄って自分の場所と思える拠点が地域にたくさんできると良いですね」と振り返りました。山森さんは「地域ごとの特徴は違っても、根っこの思いは共通しています。支援する・されるという関係ではなく、お互いが頼り合いながら、ともに生きやすい社会を作っていけると良いです」と語り、イベントを締めくくりました。
パルシステム連合会は、多様な立場にある人たちへの理解を広めるため、情報メディア「KOKOCARA」や地域活動情報誌「のんびる」での記事掲載、連携団体の「ひきこもり女子会」開催への協力など、様々な活動を行っています。今後も、多様な状況に置かれる人たちの声に耳を傾け、誰もが暮らしやすい地域づくりを進めていく方針です。




