研究の背景
近年、都市部ではヒートアイランド現象の緩和や景観の向上、環境への配慮といった理由から、屋上や歩道、駐車場などへの「路面緑化」が進められています。しかし、土壌の量が限られていたり、水やりが十分にできなかったりする環境では、植物が初期段階でしっかり根付かなかったり、特に夏の暑さで枯れてしまったりすることが大きな課題となっています。
竹中工務店が展開する独自の路面緑化工法「ハニカムグリーン」においても、より安定した緑化性能を実現するための技術が求められていました。そこでWAKUは、これまで農業分野で培ってきたグルタチオンを活用した植物活性制御技術が、建築や都市緑化の分野にも応用できるのではないかと考え、この共同研究がスタートしました。
研究の目的
今回の研究は、路面緑化工法「ハニカムグリーン」において、植物がより安定して育ち、厳しい環境にも耐えられるようにすることを目的としています。都市部の路面緑化は、土壌が少なく、水やりが制限され、夏の高温・乾燥といった過酷な状況で維持されることが多いため、特に施工後の初期定着や、水やり頻度を抑えた際の枯れるリスクが課題です。
そこで、WAKUのグルタチオン技術を芝生ユニットに適用し、以下の影響を定量的な指標(NDVIなど)を用いて検証しました。
- 初期生育の立ち上がりへの影響
- 水やりを制限した条件下における植物の活力度およびストレス耐性への影響
この検証を通じて、路面緑化におけるグルタチオン活用の有効性と、都市緑化への実用化の可能性を確かめることを目指しています。

研究概要
研究では、「ハニカムグリーン」の芝生ユニット(500mm × 500mm)を対象に実施されました。
試験条件:
-
無施用(対照区)
-
グルタチオン粒剤
-
グルタチオン液剤
-
粒剤+液剤
評価方法:
-
生育期間および灌水制限期間におけるNDVI(正規化植生指数)測定
-
写真による生育状況の定点観察
※NDVIは植物の活力度を示す指標で、芝生では0.7前後が良好な目安とされています。
研究結果
今回の共同研究の中間的な検証結果から、グルタチオンを施用した芝生ユニットにおいて、生育初期と水やりが制限された条件下での生育にいくつかの特徴が見られました。
-
初期生育の促進
グルタチオン液剤、または粒剤と液剤を併用した条件では、何も施用していない区と比べて芝生の生育立ち上がりが早い傾向が見られました。NDVIの推移からも、生育開始後およそ2週間で活力が上がっていることが確認され、初期生育を促進する可能性が示唆されました。 -
乾燥ストレス下での活力維持
初期生育後に水やり頻度を週1回に制限した条件下では、粒剤と液剤を併用した区でNDVIの低下が比較的緩やかでした。これは、急激な水やり条件の変化によるダメージからの回復が早い傾向を示しており、乾燥ストレス環境下でも植物の活力をある程度維持できる可能性を示しています。 -
十分な灌水条件下での効果
一方で、水やりが十分に確保された条件(2日に1回)では、各施用区間でのNDVIの差は小さく、植物に水ストレスがほとんどかからない環境では、グルタチオンの効果が顕著には現れにくい傾向も確認されました。このことから、グルタチオンの効果は、特に環境ストレスがある条件下で発揮されやすいと考えられます。
これらの結果から、グルタチオンの施用が、路面緑化における芝生の初期定着や、水やりが制限される環境下での生育安定性の向上に貢献する可能性が示されました。
今後の展望
今回の研究では、初期生育の促進や乾燥ストレス下での活力維持の可能性が確認されました。今後は、芝生ユニットの根量(乾燥重量)分析も進め、地上部だけでなく地下部の生育特性も含めた総合的な効果を評価する予定です。
引き続き、この検証で得られた知見をもとに、路面緑化における初期定着率の向上、水やりや維持管理の手間の軽減、そして夏季における安定した緑化の実現といった実用的な価値の検証を進め、建築・都市空間での実用化を目指していくとのことです。
WAKUは、農業分野で培った植物生理やストレス制御に関する技術を、建築・都市・インフラ分野へ展開することで、持続可能な都市環境づくりに貢献していく意向です。
会社概要
-
会社名:株式会社WAKU
-
所在地:岡山県岡山市北区芳賀5303 ORIC101号室
-
代表者:代表取締役 姫野亮佑
-
設立:2022年7月
-
事業内容:グルタチオンを活用したバイオスティミュラント・肥料の研究開発および販売



