卒業直前の3年生へ、1年間の「世界とつながる学び」をフィードバック
2026年1月23日、オイスカ浜松国際高等学校で、卒業を控えた3年生を対象に「世界とつながる学び」講演会が開催されました。特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクトが、同校がこの1年間取り組んできた国際実装型の探究活動を総括し、フィードバックを行いました。
ユネスコスクールであるオイスカ浜松国際高校は、国際理解、環境学習、地域協働を柱に教育を展開しており、多くの留学生が学ぶ国際色豊かな環境です。今回の取り組みは、日常的な国際交流の枠を超え、これまで直接つながることが難しかった紛争や避難の現場へ「質の高い教育(SDG4)」を届ける実践へと踏み込みました。

講演会では、1年間の活動成果として、教材や支援物資の現地での活用状況や反響が共有されました。また、「学びが世界で使われる」プロセス(つくる→届ける→反響が還る)が整理され、卒業後につながる“次のアクション”設計について議論されました。

1年間の成果:オイスカの探究が“世界4か国”の支援へ
オイスカ浜松国際高校は、この1年間で、授業や地域学習、環境学習で得た知識をなかよし学園の国際実装プログラムに接続し、ケニア、ルワンダ、シリア、カンボジアといった複数地域の支援活動に参加しました。現地では、教育支援、文化理解、食料支援など、それぞれの文脈に応じた形で成果が実装されました。
今回のフィードバック講演では、特に「教材化・実装・還流」の3点が、具体的な事例で整理されました。

「オイスカ茶」——国境を越えて“日本理解教材”に
オイスカの環境学習や地域実践の象徴でもある茶摘みなどの活動は、単なる地域の学びで終わらず、海外の学びの場で「日本を知る教材」として活用されました。ケニアやシリアでは、オイスカ茶が日本理解の教材として用いられた事例が報告されています。
この事例が示すのは、国際交流が「紹介」に留まらない点です。生徒たちは、茶という具体的なものを通じて、言語、文化、暮らし、地域資源を“説明可能な教材”へと再編集し、異文化の学習者に伝わる形へと落とし込みました。



「SDGsカルタ」——“考える教材”が、海外の授業へ
3年生を中心に制作された「SDGsカルタ」は、作品発表で終わらず、海外の授業での活用を前提に設計された教材です。カルタは、言語や文化の違いがある現場でも、遊びと学びを同時に成立させる強力な形式です。“相手の文脈で使える教材”を意識して設計することで、探究は「国内発表型」から「国際実装型」へと質的に変化しました。



「お米」——カンボジア避難民支援で“命を支える”実装へ
2025年12月末、なかよし学園はカンボジア・シェムリアップ州の避難民収容寺院で、教育支援と食料支援を実施しました。全国の学校から集まったお米などを活用して炊き出しが行われ、戦禍を逃れてきた人々へ日本のお米でおにぎりが振る舞われました。カンボジアでは珍しい「日本のお米」と「おにぎり」という食べ方は、食料支援だけでなく「食育」としても効果的で、寺院の代表から高い評価を受けました。
なかよし学園の活動は、国際理解が知識のインプットや「感想」で終わらず、現地の困難に対して“機能する支援”として実装されている点が重要です。世界情勢を知った生徒たちが「何かやりたい!」という気持ちを行動につなげられるよう、「今、できることで世界を応援しよう」と、現地実装からフィードバックまでをトータルプロデュースしています。



オイスカだからこそ生まれた価値:国際色の豊かさを“平和への実装”に変えた
オイスカ浜松国際高校は、ユネスコスクールとしての理念と実践基盤を持ち、留学生も多く、国際理解教育の土壌が整っています。しかし、国際色が豊かな学校であっても、紛争や避難の現場の当事者と「学びの関係」を結ぶのは容易ではありません。
なかよし学園が提供するのは、単なる交流機会ではなく、教室で生まれた成果物を現地で実際に使い、その反響を還流させる循環モデルです(つくる→届ける→反響が還る)。この循環によって、生徒たちは「支援する側/される側」という固定関係ではなく、学び合い、支え合う関係として世界とつながる成功体験を得ています。

この取り組みは、日本の新しいグローバル探究学習モデルとして注目されています。
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地域学習・環境学習を、そのまま国際実装へ接続できるため、新たな大掛かりな教材は不要です。
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成果物が「現地で使われる」前提で設計されるため、探究が深まり、説明責任や再編集力が育ちます。
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複数国・複数校の連携により、単独校では難しい国際貢献が可能になります。
関係者コメント|現場の先生が見た「生徒の変化」と、教育が世界に届く瞬間
オイスカ浜松国際高等学校の鈴木哲子教諭は、「導入から実践、そして振り返りへと学びが積み重なる中で、生徒たちは世界の現状を知り、『自分には何ができるだろうか』と真剣に考え始めました。実際に役に立っている場面を目の当たりにした瞬間、生徒たちは初めて確かな実感として『やってよかった』と口にしました」と、生徒たちの変化を語っています。
専門学校オイスカ・アグリ・カレッジの幸田穂奈美講師は、「高校生の頃の『世界に貢献したい』という気持ちが再びよみがえりました。このような『本気で生きている大人』と出会えることは、高校生にとって何より価値のある経験だと強く思います」と述べ、このプロジェクトが教育現場にもたらす影響の大きさを実感しています。

特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト代表の中村雄一氏は、「国際理解教育は、国際色が豊かであるほど“知っているつもり”で止まりやすい。しかし、紛争や避難の現場に『質の高い教育』を実際に届け、現地で使われ、声が返ってくるとき、学びは一気に当事者性を帯びます」と語り、オイスカの生徒たちが示した「世界の困難に対して、学びが機能する」という事実の重要性を強調しました。

卒業は終わりではなく、この1年間で得た“実装の手応え”が、オイスカの生徒たちのそれぞれの人生で、社会を良くする行動へ繋がることを信じているとのことです。



