280kmの車いす行進がコスタリカの法律を変えた!JICA国際協力賞が「誰一人取り残さない社会」への挑戦を称える

日本と世界の未来を拓く「循環型のインパクト」

今回の受賞案件に共通するのは、日本と世界の現場が互いに学び合い、実践の中で磨かれた成果が、世界にも日本にも活かされるという「循環」と「環流」のプロセスです。WHO(世界保健機関)による推奨や国連からの高い評価など、日本発の技術や取り組みが世界各地の現場で磨かれ、確かな成果として実証されました。

これらの知見は今、離島などの遠隔地医療や国内自治体における共生社会の条例化を支える力として日本各地にも還元され、日本国内の課題解決を加速させる原動力にもなっています。

授賞式の冒頭、田中明彦JICA理事長は、受賞者3組の活動が「誰一人取り残さない社会をつくる」ことに貢献したと称賛しました。また、峯陽一選考委員長(JICA緒方貞子平和開発研究所 所長)は、協力成果の現地での発現、当事者主導の制度改革や国際的な横展開、さらにはその成果の日本社会への「循環」・「環流」への貢献を高く評価しています。

受賞者たちの「誰一人取り残さない社会」への挑戦

1. 制度制定への歩み:コスタリカの「障害者自立法」成立に寄与したリーダー

ウェンディ・バランテス氏(障害者自立生活センター「モルフォ」代表)

緑色の揃いのTシャツを着た人々が、車椅子に乗った仲間と共に道路脇でポーズをとっています。

2歳で筋ジストロフィーを発症したバランテス氏は、2009年のJICA研修で日本の障害者の自立生活に触れ、母国での普及を決意しました。2011年に障害者自立生活センター「モルフォ」を設立し、ラテンアメリカ14カ国の障害者自立生活ネットワーク代表を務めています。

2016年には、介助者派遣の公費負担を求める制度化を訴え、280kmにも及ぶ車いす行進を実施。この活動は世論を動かし、同年の「障害者自立推進法」成立に大きく貢献しました。

「Zero Project」のロゴが映し出されたスクリーンを背景に、5人の人々がステージに立っています。

2023年には、国際的に権威ある『Zero Projectアワード』を受賞。この事例は、日本の自治体が「共生社会の条例化」を検討する際のモデルとしても注目されています。

黄色の背景の前で車椅子に座る、緑色のニットワンピースを着た女性のポートレート。

バランテス氏はスピーチで「私たちの闘いは、人間として尊厳を持って生きるためのもの」と強調。コスタリカの取り組みはラテンアメリカで広がり、8,000万人以上の障害者が自立した生活を送る権利を擁護するまでになったと語りました。

2. 地域医療を支える技術:WHO推奨、日本発の技術が世界の母子保健に貢献

原 量宏氏(香川大学名誉教授)/ 尾形 優子氏(メロディ・インターナショナル(株)CCO)

マットに横たわる人の腹部を、二人の女性が囲んで診察またはケアしている場面。

モバイル胎児モニター(CTG)の基本原理を築いた原氏と、医療ITの旗振り役である尾形氏は、遠隔地から胎児の状態をモニタリングできる世界初のフルワイヤレスモバイル胎児モニター「iCTG」を開発。世界の「命の格差」を埋める活動を続けています。

2022年には、日本製スマート医療機器として初めてWHO(世界保健機関)の推奨機器に選定され、ブータンやタイ、アフリカ、ラテンアメリカなど世界17カ国で導入が進んでいます。

白いスタンドに置かれた水色とピンクのハート型デバイスが、グラフを表示するタブレットとともに写っています。

世界で磨かれた信頼は、日本国内の離島・過疎地へも還元されています。医師不足に悩む日本の自治体でも、「iCTG」は妊婦がどこにいても安心して過ごせる地域医療の基盤を支えています。

JICAのイベントで、高齢の男性が演台に立ち、マイクと日本の国旗を持ちながらプレゼンテーションを行っています。

原氏はスピーチで、日本の優れた周産期医療のノウハウを途上国へ生かしていくことの重要性を語りました。

黄色の背景の前で、女性がマイクを手にスピーチをしています。

尾形氏は「iCTG」が、胎児の心拍数と妊婦の陣痛を測定する携帯型医療機器であり、どこにいてもリアルタイムでデータ共有が可能と説明。産科医が不足する地域や途上国での早期異常発見と適切な分娩管理に貢献すると強調しました。この挑戦は、世界のどこで生まれても安全に産声を上げられる未来を目指しています。

3. 共生社会の実現へ:「障害主流化」を国内外で推進する先駆者

高嶺 豊氏(NPO法人エンパワメント沖縄 理事長)

2005年3月8日、屋内の教室のような場所で、一人の東アジア人男性と多くの南アジア系の男女が集合している様子です。

17歳で車いす生活となった自身の経験を原点に、ハワイで得た障害者の「自立生活」理念を携え、沖縄から世界へ社会変容を広げてきました。国連での活動やJICA専門家としての知見を融合させ、四半世紀以上にわたり国内外の障害者政策を牽引。「障害主流化」というアプローチを普及させています。

2009年からはJICA専門家として、障害者の社会参加を促すカリキュラムを指導。遠隔助言や現地訪問を通じた継続支援により、コロンビアでの自立生活センター開所や、ドミニカ共和国でのインクルーシブ教育支援委員会発足など、具体的な成果を生み出しています。

開発途上国の地域で、地元住民と日本人男性2名(うち1名は車椅子)が屋外で集合している写真。

国際的な政策提言の知見は、自身の拠点である沖縄の地域福祉にも還元され、2014年の沖縄県「共生社会条例」制定にも尽力しました。これは、国際協力の知見を日本の制度設計にも活かす「環流モデル」を示しています。

金色の背景の前にて、車椅子に座った白髪の高齢男性がスーツを着てマイクでスピーチをしている。

高嶺氏はスピーチで、自身の沖縄での原体験が開発途上国での共感を生んだと振り返り、国連時代に主導した自助グループの育成やバリアフリー化の波がアジア全域の制度として定着している実績に触れました。今後も「障害者の自立と社会参加の促進、そしてインクルーシブな社会の実現に少しでも貢献できるよう、尽力していく」と力強く語っています。

JICAについて

JICA(独立行政法人国際協力機構)は、開発途上国が直面する課題を解決するため、日本の政府開発援助(ODA)を担う二国間援助の実施機関です。世界150以上の国と地域で事業を展開し、世界の平和と繁栄、そして日本社会の発展に貢献しています。

JICAの詳細については、JICA公式サイトをご覧ください。

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